光州事件のトラウマに苦しむ元兵士の「奇行」を描いた「ショベルカー」
(原題直訳)なる映画を観た。
シュール、と言えばよいのか、冒険的と言えばよいのか、とにかく
不思議な映画だった。
その映画の影響もあり、光州事件を題材にした映画「光州5・18」も
観た。10年ほど前に制作された映画で、一度、観た記憶はあるが、
現在の「ヲタク」の感性で、また観てみたいと思ったのだ。
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■포크레인 「ショベルカー」 2017年 〇〇〇--
1980年の光州事件の際、独裁政権は、民主化を求める学生や市民の
デモを「北朝鮮に煽動された暴動」と断定し、韓国軍の最精鋭部隊
である空挺部隊や戦車部隊までデモ制圧の最前線に投入した。
学生や市民を中心に200人近い死者を出すなど凄惨を極めた作戦に
参加した兵士の中には、事件後、肉体的、精神的な後遺症に苦しむ
ことになった人も多い。
加害者であった兵士らもまた、被害者だったのだ。
空挺部隊の上等兵として作戦に動員され、所属小隊が2人の学生を
殺害し遺体を山野に埋める場面に立ち会った主人公(架空人物)も、
過去のトラウマを引きずりながら生きている元兵士の一人。
現在、ショベルカーの操縦士をしている彼が、工事現場で偶然、朝鮮
戦争時代の遺骨を掘り出したことで、事件のトラウマがよみがえり、
彼の行動は常軌を逸して行く。
△映画のポスターより
「あの日、なぜあそこに私たちを送ったのですか?」
彼は、その疑問を解くため、街中の一般道をショベルカーで走り
ながら、当時の同僚や上司の元を訪ねて回る。ついには、元大統領の
自宅前までショベルカーで押しかけ、警察に取り押さえられてしまう。
最後は、ショベルカーで再び光州を訪れ、小隊が埋めた2人の学生の
遺骨を掘り起こし、自らの手で遺骨を光州の国立墓地に埋葬し、
慰霊する場面で映画は終わる。
光州事件を新しい視点から描いた冒険的な社会派映画だった。
■화려한 휴가 「光州5・18」 2007年 〇〇
原題の「華麗なる休暇」とは、光州のデモ制圧に最精鋭の空挺部隊や
戦車まで投入した韓国軍が、作戦に付けたニックネームだとのこと。
政治化した高級軍人たちの言語感覚の、何と恐ろしいことか。
自国の市民を銃撃した軍隊の「狂気」と、自国の軍隊に銃で立ち
向かった市民らの「狂気」。
残念ながら、この映画からは、その「狂気」が感じ取れなかった。
(終わり)