■서울야행 「ソウル夜幸」 2016年 〇〇---
(801)
2016年に公開されたインディーズ系の映画。
ある日の夜、ソウルの生活に区切りをつけ故郷の全羅道に帰ろうと
していた男と、自殺を考えていた女が、漢江にかかった橋の上で
出会う。
男が警察を呼ぼうとしたことで口論となるが、結局、2人で
いっしょに橋を渡ることになった。
そして、いっしょに食事をし、夜の街の変態カップルや不良高校生
たちといさかいを起こすかと思えば、酒を飲んでカラオケを歌う。
最後に入ったラブホテルでは、男がバイアグラ代わりに買った
強壮剤のせいで、2人とも奇妙な幻覚を起こしてしまい、まさに
夢のようなセックスを経験する。
こうして若い男女は、何も決まっていない不確かな夜明けを2人で
迎え、映画は終わる。
とりとめのない映画ではあったが、物語の展開には、そこそこ
引き込まれた。
■우리들의 일그러진 영웅 「我らの歪んだ英雄」 1992年 〇〇〇--
(800)
1992年に公開された純文学風の映画で、国際的に高い評価を得た
名作だ。過去、「ヲタク」も2,3度見た覚えがある。
主人公である1人の予備校講師が、過去の自分を回想する形で物語が
進む。
ソウルの名門小学校から郡部の小学校に転校した1人の男子生徒が、
学級に君臨する「급장(級長)」の理不尽な独裁に抵抗するものの、
結局、彼に屈服させられてしまう。そして、幼心(おさなごころ)に
独裁者に従順に従うことで得られるうまみと喜びを知る。
しかし、新しく赴任した担任教師が、級長が試験のたびに学年で
1番の成績を取っていた不正のからくりを見抜き、級長と級長の
不正に協力していた生徒たちを罰し、不正を正す。
独裁者の地位を奪われた級長は、学校に放火し、村を逃げ出す。
子どもの世界を描いた映画にしては、何とも、陰惨な内容の
ドラマであった。
おそらく、この映画の主人公である転校生には、過去、望むと
望まざるとに関わらず、韓国の軍事独裁政権を支え続けた多くの
国民の姿が重ねられている、と見るべきなのだろう。
独裁とは、決して独裁者1人で成立するものではない。1人に
従順に従い、ごまをすり、忖度し、そうすることによって自己の
利益と喜びを得る者たちの支えがあって初めて可能になるのだ。
(終わり)