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漢江の中州と恋物語

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■김씨표류기  「彼とわたしの漂流日記」 2009年  〇〇〇〇〇
(265)



高利で何倍にも膨らんだ多額の借金を抱えた上に、ままならない
再就職。愛想をつかした彼女は彼の元を去って行った。

ある年の春、疲れ果てた男は、漢江に身を投げ自殺を図る。



ところが、奇跡的にも彼は生きたまま漢江の中州に流れ着いてしまう。



今度は高層ビルから身を投げようと街に帰ろうとするのだが、彼は
泳げない。中州で首を吊ろうにも、うまくいかない。


△観光用の白鳥ボートが彼が人生で初めて手に入れたマイホーム

こうして、思いもしなかった中州での自給自足の漂流生活が始まった。

観光用の白鳥ボートをねぐらに定める。火をおこす。魚を取り、鳥を
取り、まるで無人島生活を彷彿とさせる厳しいサバイバル生活。

そして、その彼の様子を対岸の高層アパートの一室から観察する
女性がいた。


△春の民間防衛訓練の日、彼女は彼を発見した

自室に引きこもって3年目になる彼女が、趣味の月撮影で使っている
望遠レンズ付きのカメラ(Sony α35)で、中州で自殺しようとして
いる彼を偶然、発見してしまったのだ。

しばらくして彼女は、彼への好奇心が抑えられなくなり、勇気を出して
3年ぶりに外に出て、ワインの空き瓶に詰めた短い英文のメモを
漢江の橋から彼の住む中州に投げこんだ。



およそ3か月後の夏、瓶の中のメモに気づいた彼は、砂浜に返事を
書いた。

そうして始まった奇妙は文通は、絶望していた人間世界に2人が
再び関心を向けるきっかけになっていく。

しかし、ある秋の日、突然、その幸せな文通にも最後の日が訪れる。

河川管理事務所の職員らが無理やり彼を川岸へと連行する様子を見た
彼女は、居ても立っても居られなくなり、彼の元へと走り始める。


△部屋を飛び出し彼の元へと走る女

それはもう、完全に恋だった。


△秋の民間防衛訓練でバスが停車したため、彼に追いつくことができた

中州のホームレスと引きこもり女性の恋の物語は、すでに始まって
いたのだ。

おそらく、2人は、決して楽ではない未来を、お互いに支え合い
ながら生きていくことになるのだろう。

現実にはあり得ない話ではあるが、映画の中でくらいは、そんな夢の
ような恋があったっていい。

久しぶりに中高年「ヲタク」の胸を熱くさせてくれたラブストーリーで
あった。

・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・

ところで、この映画にも登場したジャージャー麺。

韓国の国民ヌードルだ。

中華料理店の奇特な配達夫が、10万ウォン(約1万円)で中州までの
配達を請け負った。


△中州まで配達されたジャージャー麺

結局、彼はこのジャージャー麺を受け取らず、彼女に送り返した。

「ヲタク」は「ヲタク」として、次回のプサン訪問では、何が何でも、
この韓国式中華料理を食べねばなるまい。


(終わり)



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