■김광석 「(直)キム・グァンソク」 2017年 〇----
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2017年に公開されたドキュメンタリー映画。
△ファンで賑わう大邱のキム・グァンソク通り(映画より)
伝説的フォーク歌手、キム・グァンソクの自殺(1996年)に疑問を
投げかけ、彼の死に妻や第3者の男が関与したことを強く匂わせる
内容となっている。
この作品だけを見れば、「99%」の確率で、巨額の遺産(著作権)を
ねらった妻が、キムの殺害に関与しているという印象を持ってしまう。
(それほどしっかり著作権が保護されているとは言い難い韓国で、
キムの残す著作権料が、はたしてそれほど高額なのか、については
大きな疑問が残る。)
しかし、キムの日記(苦悩)の一部や警察の検死報告が公開され、
一人娘の病死の経緯なども明らかになった現在、妻や第3者への
疑いは、ほぼ消えたと言ってよい。
無名時代からキムを支えた女性は、確かに、高潔で品行方正な
女性ではなく、むしろ人格的に様々な問題を抱えた女性だったの
かもしれないが、キムや一人娘を手にかけるような人間では決して
なかった。
少なくとも「ヲタク」は、そう考えている。
■공동정범 「(直)共同正犯」 2018年 〇〇〇〇-
(533)
2018年に公開されたドキュメンタリー映画。「二つのドア」(2012年)の
続編にあたる作品だ。
△警察と「用役」(民間実力部隊)が包囲したビル屋上の籠城小屋に猛烈な放水(映画より)
2009年1月、ソウル都心部の大規模再開発の補償内容に反発し、
廃ビル屋上の監視小屋に籠城した撤去民に対し、警察が大々的な強制
排除に乗り出し、住民側5人、警察側1人、合計6人の死者を出す
大惨事が発生した。
△小屋の内部に催涙弾を撃ち込んだ後、クレーンのコンテナから特殊部隊が突入(映画より)
この作品は、その龍山事件の責任を一方的に負わされ、共同正犯の
罪で服役した5人の撤去民らの出所後の生活や活動を記録している。
△撤去民が準備していた大量のシンナーが発火し、小屋は一転、火の海に(映画より)
当時、作戦を指揮したソウル市警の本部長は、何らの責任を問われる
ことなく、逆に、2018年現在、国会議員(慶尚北道、保守系)に
大出世している。
また、当時のソウル市長(保守系)や李明博大統領が、この作戦に
全く関与していないことになっているが、にわかには信じがたい。
なお、皮肉なことに、6人の死者まで出して強引に先を急いだ龍山
地区の再開発だったが、世界金融危機の影響で推進力を失い、一旦、
頓挫してしまう。そして、その後、再び事業が動き出すまでには
かなりの年月を要した。
■야경:죽음의 택시 「(直)夜驚 : 死のタクシー」 2017年 -----
(532)
2017年公開のインディーズ映画。海外の複数の映画祭に参加した
作品だ。
連続殺人の容疑者を追いつめながらも失踪したフリーランスの
記者が残した動画記録を紹介する内容。
それ自体は臨場感のあるサスペンスホラーだったが、映画製作者
(日本人女性)に記者の失踪の顛末(動画)を紹介した妹が、最後の
最後で、作品の理解を混乱させる。
「記者の残した動画記録」自体が、「妹」が自分を売り込むために
作った「作品」だった可能性を匂わせるからだ。
いずれにしろ、難解、つまり、観る者に対し非常に不親切な映画で
あった。
(終わり)