唐突ながら、日本で売春防止法が施行され、いわゆる「赤線」が
廃止されたのが1958(昭和33)年。
その日本に遅れること3年、韓国でも1961年に韓国版売春防止法、
「淪落行為等防止法」が施行され、以後、罰則強化などの改正を
重ねた経過があった。
ところが、ノ・ムヒョン政権下の2004年、新しいパラダイムで
性売買の完全禁止をめざす売春防止新法(「性売買特別法」)が
制定されたのを受け、従来の「淪落行為等防止法」は廃止された。
さて、新法の制定から10年以上が経過した今、新法の最大の
ターゲットとされた風俗街、つまり韓国の性売買の最前線は、
どういう状況になっているのか。
NAVER地図やDaum地図のストリートビューでは、その種の街の
現状の一端が垣間見れる。
ここでは、ソウルとプサンから2地区ずつ確認してみた。
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■ソウルA地区
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△Daum地図ストリートビューより(2016年撮影)
左手の小屋は青少年通行禁止区域監視所。
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△Daum地図ストリートビューより(2016年撮影)
監視所には、「ここは青少年通行禁止区域です。満19歳未満は通行する
ことができません。」とある。韓国では高校生までは青少年(未成年)。
満19歳以上が成人なのだ。
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△Daum地図ストリートビューより(2016年撮影)
監視所の向かって左に立っている看板では、地元警察署が市民に
対して、青少年保護を目的に褒賞金付きの申告を呼びかけている。
申告対象と褒賞金の額は、「青少年を雇用している業者を申告すれば
20万ウォン(約2万円)」、「青少年の立ち入りを黙認している業者を
申告すれば10万ウォン(約1万円)」とある。
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△Daum地図ストリートビューより(2016年撮影)
問題の街への入り口には、まるで入場ゲートのような看板がある。
内容は、「청소년 통행금지 구역(青少年通行禁止区域)」。
ゲート奥の通りにはボカシが入っている。
地図でボカシを入れなければならないことが、現在も行われている、
と見るしかないだろう。
■ソウルB地区
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△Daum地図ストリートビュー(2015年撮影)より
すだれの奥がその種の街。
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△Daum地図ストリートビュー(上記画像を拡大)より
「미성년자 출입금지(未成年者 立入禁止)」の警告の下には、黄色の
横断幕がかかっている。横断幕には、
<축>6.29일 성노동자의 날 11주년 기념<축>
<祝>6月29日 性労働者の日 11周年記念<祝>
の文字が見える。
この街には、現在も売春防止新法に抗(あらが)う経営者や
「性労働者」たちが少なからず存在している、と見てよいだろう。
ちなみに、「6月29日」という日は、大統領直接選挙制などを勝ち取った
「6・29民主化宣言」(1987年)の精神にちなみ、犯罪者ではなく
「性労働者」としての地位を獲得したいとの意味を込め選ばれた日だ
とのこと(全北道民日報15年7月2日付記事)。
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△Daum地図ストリートビューより(2015年撮影)
ストリートビューで確認する限り、この地区では、一般道から街へ入る
入り口すべてに、すだれがかけられている。
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△Daum地図ストリートビューより(上記画像拡大)
また、「青少年通行禁止監視所」(写真左のボックス)の置かれた
入り口も確認できる。
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△Daum地図ストリートビューより(2015年撮影)
ソウルでも1、2を争う規模を持つ風俗街として名をはせたこの街では、
現在もなお、「未成年者立入禁止」の状況が続いている、と見てよさそうだ。
■釜山A地区
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
右手の坂道が「青少年通行禁止区域」への入り口の一つ。区域を示す
立て看板は小さく、目立たない。
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
こちらも、街への入り口。
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△Daum地図ストリートビューより(上記画像の拡大)
「xx 새천년 청소년의 바른 성장!(xx 新千年 青少年の正しい成長!)」
と書かれたボックスは監視所なのだろうか。
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
見るからに堂々としたこの街は、日本統治時代の遊郭(公娼街)の街割りを
そのまま引き継いでおり、規模はかなり大きい。
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
往時に比べ、営業範囲は狭(せば)まったようだが、依然、韓国最大級の
規模であることに変わりはない。
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
2014年現在、この街では、店名の表示が全て消され、画像からも不気味な
雰囲気が漂ってくる。
これが、新法成立後、当局との衝突を繰り返しながら到達した、何らかの
妥協点だったのだろうか?
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
それにしても、飾り窓の向こうの黄色い椅子や赤い床の間に座って
客を待つのは、一体、どういう人たちなのか?
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
それについては、想像に止(とど)めて置くくらいでちょうどいい。
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△NAVER地図ストレートビューより(2014年撮影)
ちなみにNAVER地図では、この街の通りは全体がボカシだらけになっており、
ここが依然、通常の街ではないことを教えてくれている。
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
また、この地区の一角にはキリスト教の大きな教会があり、玄関には
聖書の一説が書かれている。
「重荷を背負って苦労している者たちよ。すべて私のところに来なさい。
私があなたがたを休ませてあげよう。マタイ11:28」
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△Daum地図ストリートビューより(2014年撮影)
さらに、この地区周辺で、少なくとも2店の「トランスジェンダー・
クラブ(ニューハーフ・クラブ?)」が看板を掲げていることを
地図で確認した。
「ヲタク」は、この街が、現在もなお、韓国最大級の風俗街である、
と見ている。
■釜山B地区
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△NAVER地図ストリートビューより(2016年撮影)
すだれの奥の通り(上記画像の左が歩道、右が車道)がその種の街。
車道上にペイントされていたはずの「青少年通行制限区域」の文字は、
かすれて見えない。
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△NAVER地図ストリートビューより(2016年撮影)
右側のすだれをくぐった車道沿いの店は、Daum地図では全ての飾り窓に
ボカシが入っているが、NAVER地図では上記の通りボカシは入っていない。
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△NAVER地図ストリートビューより(2016年撮影)
はたして、成人しか通ってはいけないこの街の店で、一体、何が行われて
いるのだろうか?
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△Daum地図ストリートビューより(2016年撮影)
なお、この街の大通りに面した店は、植木で隠してある。
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△Daum地図ストリートビューより(上記画像とは反対方向から)
理解に苦しむが、上下4車線の道路上には「청소년통행제한구역(青少年通行
制限区域)」の文字が、デカデカとペイントされている。
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△Daum地図ストリートビューより(2016年撮影)
一方、同じ文字だが、歩道上の表示(上の画像で青で囲んだ部分)は
控えめだ。赤いボックスは、例によって監視所なのだろうか?
いずれにしろ、青少年の通行を制限しなければならない何かが、この
界隈で現在も行われているのは間違いない。
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最後に話題を日本に戻そう。
日本の「赤線」区域は、周知の通り、売春防止法制定後、その多くが
廃業に追い込まれた一方、都市部や温泉観光地を中心に、相当数の区域の
店が風俗店や特殊料亭(?)への鞍替えに成功し、半ば公然と性売買が
続いている。
「ヲタク」は、そうした日本の実態を積極的に擁護する気は全く
ないが、かと言って非難する気もない。
多少の陰影の存在さえ許されないような国では、人間の精神が
窒息させられてしまいそうな気がするからだ。
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(終わり)
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売春防止新法と韓国の今
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