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ソウルの中の中国

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「ヲタク」は、妻の実家のあるプサン市草梁洞を基点にした韓国体験に
十分、満足しているので、これまで韓国に行っても、特にソウルに
行きたいなどと考えたことはなかった。

そういう「ヲタク」が、今は、機会があれば、いや、いつか機会を
作って、是非、ソウルに行ってみたいと思うようになった。

端的に言ってしまうなら、いつか、「ソウルの中の中国」を歩いて
みたいのだ。


△加里峰洞の朝鮮族街(2016年、Daum地図ストリートビューより)

きっかけは、例よってDaum地図のストリートビューを使った
バーチャルドライブだった。

・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・

1970年代から80年代にかけ、韓国の工業化をけん引したのが
ソウルの九老工業団地(現・加山デジタル団地)だった。

年若い女工を中心に、最盛期には10万人を超える職工たちが、裁縫工場を
中心とする団地内の工場で働いた。

一方、団地周辺の加里峰洞(九老区)や大林洞(永登浦区)には、
職工向けの1室5畳前後のワンルームアパートが立ち並んだ。


△加里峰洞のアパート(2016年、Daum地図ストリートビューより)

押しなべて貧しかった当時の韓国にあって、特に農村部の若者にとっては、
ここでの暮らしは憧れの対象であったに違いない。


△加里峰洞のアパート(2016年、Daum地図ストリートビューより)

韓国全土から、多くの若者たちが、大きな夢と希望を抱いて、この地に
職と住まいを求めた。


△加里峰洞のアパート(2016年、Daum地図ストリートビューより)

家屋の壁面にまとめて設置された多数のガス計量器の数と同じか、
あるいはそれ以上の職工の生活が、それぞれのアパートの内部で営まれた。


△加里峰洞のアパート(2016年、Daum地図ストリートビューより)

その過密な暮らしぶりは、揶揄を含め「벌집촌(蜂の巣村)」なる別名も
生んだ。


△加里峰洞のアパート(2016年、Daum地図ストリートビューより)

しかし、韓国の発展と財閥主導の重工業化の進展の中で、「蜂の巣村」の
魅力も色あせて行かざるを得なかった。

今や、多くの若者たちの哀歓が染み込んだこの街で、韓国の若者の
姿を見つけることは難しい。



代わって、この「蜂の巣村」に新しいチャンスを求め集まって来たのが、
中国の朝鮮族だった。

1990年代に入ると、韓中の国交正常化を受け、産業研修生の受け入れ
制度(現・雇用許可制)もスタートし、工場地帯や都心部に近く、
保証金や月家賃も格段に安いこの街は、中国朝鮮族にとっての
「希望の街」に変わった。


△加里峰洞の住宅(2016年、Daum地図ストリートビューより)

2012年現在、加里峰洞と大林洞だけで、実に約6万人もの中国人(大半は
朝鮮族)住民が暮らしている(韓国法務省)。



そうして、加里峰洞と大林洞の商店街の周辺に、中国朝鮮族の生活の
場としての中国人街が形成された。


△加里峰洞(2016年、Daum地図ストリートビューより)

そこは、観光地化した、世に言う「チャイナタウン」とは全く趣
(おもむき)を異にした街である。


△「ゴミの無断投棄は犯罪!その罪は子の代まで災いをもたらす」との警告

中国の日常を切り取って、街と人間をそっくりそのままソウルの中に移植した
ような、一種不思議な異空間だ。


△「ゴミを片付けるのは善行です。善行を積めば子の代に大臣が出ます。」

街の横断幕も、韓国とはずい分メンタリティーが異なっているように
感じる。


△加里峰洞「憂馬通り朝鮮族商友会発足」を祝う横断幕

そして、街では、ハングルより漢字が目立つ。


△加里峰洞の朝鮮族街(2016年、Daum地図ストリートビューより)

ストリートビューの特定のカットだけを選んで見せれば、そこが中国の街だと
言っても、誰も疑わないだろう。


△大林洞の朝鮮族街(2016年、Daum地図ストリートビューより)

街で飛び交う言葉も中国語、流れる歌も中国の流行歌や懐メロなのだという。


△大林洞の朝鮮族街(2016年、Daum地図ストリートビューより)

夢や希望があれば、焦りや挫折もある。


△加里峰洞の警官詰所(2016年、Daum地図ストリートビューより)

酒を飲んで騒ぐ事もあれば暴力沙汰も起きる。


△大林洞の横断幕(2016年、Daum地図ストリートビューより)

しかし、罰金300万ウォン以上の犯罪を犯せば強制退去の対象となる。


△大林洞の横断幕(2016年、Daum地図ストリートビューより)

ストリートビューは、文字通り、その街の表面しか映さない。それでも、
一定程度、その街で暮らす人々の生活をうかがい知ることができる。

それにしても、これらの街の風情に、中国朝鮮族住民の強烈な自己主張を
感じるのは、「ヲタク」だけだろうか?

朝鮮語を母語として育つ人も多いと聞く朝鮮族だが、やはり、韓国人とも
朝鮮(北朝鮮)人とも明確に異なる、中国朝鮮族としての確固たる
アイデンティティが存在している。

「ヲタク」には、そう感じられてしかたないのである。



(終わり)







参加カテゴリ:地域情報(アジア)


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